キーンコーン、カーンコーン。
いつの時代になってもこれこそが定番とばかりに校舎に鳴り響いた鐘の音にサンジは級友達とのおしゃべりをやめて慌てて自分の席へと戻った。
本日3つ目の授業は『体育』。サンジがもっとも得意とする授業の一つだ。
「今日は『魔王の砦』クリアが課題になる」
ガラリと大きな音を立てて入ってきた教師が教卓から室内の生徒に宣言するやいなやあちらこちらから大きな溜め息が漏れた。
魔王の砦というのは生徒達が皮肉を篭めてつけた仇名で、体育のバーチャルプログラムの一つなのだが非常に困難でクリアが難しいものだ。
近未来、すべての教育は肉体と脳を切り離した形で行われるようになっていた。
体は身体として育成プログラムが組まれ、無駄なトレーニングは授業として組み込まれることはない。またその育成プログラムの中で特出した能力を示した子供がいれば、幼い時からその道のプロとしてアスリート教育を受けることも出来るのだ。
脳のトレーニングと違いバーチャルプログラムは実際の体を使ったトレーニングになる。
早い話が専用のウエアを着て、飛んだり跳ねたり走ったり、仮想空間の中を動き回ることになる。
「なあなあ、サンジィー、俺とパーティー組もうぜ」
コンと後ろから椅子の足を蹴られて話しかけられるのにサンジはニンマリと笑みを浮かべた。
級友達と違い日常でも体を鍛えてるサンジはクラスの中でもダントツでバーチャルプログラムの成績はいい。もともと運動神経もいいし、頭の回転も速く、トラップにも引っかかりにくいサンジは体育だけでいえば三本指にはいるぐらい成績はいいのだ。
「あー、まあ、組めたらな」
ほんの少しだけ後ろを振り返ってニヤリと笑いながら告げたサンジに小さく不貞腐れたようなちぇッという返事が返ってくる。サンジが知っている魔王の砦というプログラムは男子2名に女子1名のランダムパーティーで構成されるはずだ。しかも同じ時間に同プログラムをネットを使って繋いで行う為同じ学校のヤツと組むとは限らないところが、また難易度をあげているのだ。
「まず出席番号奇数のものからスタートだ。ウエアを着て体育館に集合」
「はい!!」
教師の声に行儀よく返事が返り、半数の人間が慌ただしく教室を出て行く。
「残りのものはバランスソフト使用」
「はい!」
一つのプログラムはだいたい30分程度。それでクリア出来なかった場合は”GAME OVER”表示が出て終わりだ。バランスソフトというのは音楽と簡単な問題が組み合わさったリラックスソフトの事だ。
「頑張って来いよー」
「おう・・・」
先程サンジの椅子の足を蹴ったクラスメイトが力なく笑いながら教室を後にする。サンジはそれにヒラヒラと手を振りながら楽しげにバランスソフトをノートの中へと呼び出したのだった。
~続く~
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[5回]
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