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最近一人になると途端に妙な視線を感じる事がある。
「!!!」 しかしその視線を感じた方へと勢いをつけて振り返っても誰もいないのだ。 「チッ! いったい誰だ・・・」 頭の中に浮かんだクルーの顔を打ち消しながら俺はイライラと胸ポケットから取り出した煙草を口に咥えた。 この怪奇現象が始まったのは数日前のある夜からのことだった。 いつものように見張り番へ夜食を届け、キッチンの戸締りを確認して、さて寝ようかとキッチンの扉を閉めたときだった。ジイイっと突き刺さるような視線を背後から感じたのは。 もちろんそのとき、俺の背後、つまりキッチンには誰も居なかった。 だから薄気味悪いと俺は気のせいだとそれを一蹴したのだ。 しかし、その日を皮切りに、俺はジットリと注がれる視線に何度も振り返るという行為を繰り返している。 「クソッ!!」 数日前から始まった声をかけるでもなくただ見られるだけという行為はその不気味さと伴ってそろそろ我慢の限界を感じ始めていた。俺自身信じてはいないが世の中にはユーレイや、妖怪(めいた知り合いもいるが)といった常識ではありえない存在がいると言われているし、俺も始めはこれはそういった類の、ぶっちゃけ言うと最近小競り合った海賊から奪った宝についているなにか・・だろうと思っていたのだが、どうもそうではないらしいのだ。 チョッパーが言うにはその現象が起こった俺の周りには匂いが残っているのだという。 俺の挙動不審に真っ先に気付いたのは動物だからかチョッパーが最初だった。その次に気付いたのはクソ剣士。そしてナミさん、ロビンちゃん・・・と、今ではクルー全員が俺に注がれる不可解な視線とやらに気付いている。そんな現状に俺はホッと胸を撫で下ろしたのだが、その不可解な視線の後に残る匂いはクルーの匂いなのだとこっそりとチョッパーが困ったような顔で俺に告げてきたことで振り出しに戻った。 俺の周囲にうっすらと匂いの膜が渦巻くような形で痕跡が残っているのだと小さな蹄を振り回しながら説明してくれたのだが、クルーの誰かだということは分かっても(知っている匂いだかららしい)、タイミングがあったとしても薄すぎて、一瞬だけのそれに判別できないのだとチョッパーは俺に教えてくれた。 まあ、つまりそんなチョッパーの話から想像するに俺を『見ている』のはサニー号に乗るクルーの内、『誰か』だということだ。 意識して見ることが出来るのは能力的にいってロビンちゃんだけだろうけど、ロビンちゃんが図書館でナミさんと航海について話をしていたときに俺は視線を感じた事があるのだ。つまり、俺的にはあって欲しいと願っていた視線の持ち主は麗しいレディではなく、チョッパーを除いた、ルフィ、ゾロ、ウソップ、フランキー、ブルックの男5人の誰かということらしい。 ・・・・もちろん、その事実に俺が鳥肌を立てて実力行使に及びそうになったのは他でもない。 チョッパーとレディ達に止められなかったらきっとサニーはきっと航海不可能なぐらいに破壊されていただろう。 とりあえず三人の意見は見ている本人に自覚がないのだから見ていることに気付けばこの現象は止まるだろうとの事だったし、何故見ているのかという理由を知りたくない?というナミさんの悪戯めいたチャーミングな笑みに俺がうっかり頷いてしまった事で現状維持という毎日を送ることとなった。 「・・・・・限界だ・・・・」 煙草を吸いながら人目のある甲板に出てきた俺は深く煙を吐き出しながら心情を口に出す。 本当に限界だとズルズルと目の前の柵に体を凭れかけさせる。 「くっそ! ほんとに何がしてぇんだよ」 始めはそれでも控えめに向けられていた視線は今では頭の先からつま先まで嘗め回すように俺の上を這っていく。それどころか・・・。 「・・・ッチ」 俺の上を這った視線は今度は服の中まで入り込むかのように皮膚の上を這いずり、じっくりねっとりと俺を玩ぶかのようにジリジリと刺激を与えてきたのだ。 ガンと腹立ち紛れに柵を蹴ると、あちらこちらから視線が注がれた先程と違う労わるような気遣うようなそれらに、俺は体に篭った熱を逃がすかのように一つ大きく息を吐き出したのだった。 ~続く~ . PR |
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